arukikkuの日記

映画、ゲーム、小説、漫画、アニメ、などの感想。独断と偏見で好き勝手に書いてます。

響け!ユーフォニアム『北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編』感想

1、作品について

 ユーフォニアムシリーズ原作の最新刊。久美子2年生編です。

 

2、ネタバレなし感想

 今日発売で、読み終わったので新鮮なうちに感想を。なんかブログの記事がほぼユーフォの感想になっちゃってますが(笑)

 自分は大分どっぷりのユーフォファンな気がする、というか作者の武田先生への信頼が確立しちゃってるので、小説としてあんま批判的にみることがもうできなくなっている面があります。しかし、それを考えても、今回の後編、一言でいうと、めっっっっちゃ良かった!!! 前篇は、前作のあすか問題の大変さを考えると、新入生の問題は大変っちゃ大変だけど小さくも思えていました。終盤の展開(ユーフォ3人のシーン)は凄くアツかったですが。

 しかし、後編はもうのっけから凄く引き込まれ、あっという間に読み終わりました。読んでいる間いちいち胸が痛くなったり、登場人物の成長や決意に何度も心打たれました。

 旧3年生が抜けた北宇治が部として輝き続けられるのか、そんな杞憂を一蹴し、眩しいほどの優子世代北宇治を届けてくれた。そのことに感謝しかないです。

 いやー、面白かった!!

 

3、ネタバレ全開語り

 新刊のネタバレしかありません。ご注意ください。

・希美とみぞれ

 本作の主軸である2人。希美が一番のみぞれと、みぞれを普通に好きな希美、という構図は本作で大きく転換し、互いへの強い感情が進路を通して演奏を揺さぶっていく。

お互いへの感情の熱量は本作でとても高くなってある種釣り合っていますが、嚙み合っていないという部分ではやはりいびつで、そういうズラし方をしてきたのはめちゃくちゃ上手いなと思いました。リズと青い鳥に似た関係性の真の意味も、見事に二人の関係の転換とマッチしていて、もはや心地よいレベル。

 それにしても、みぞれの強者っぷりは凄かったですね…。奏者としてここまでの魅力を秘めていたとは。ちょいちょいかましてくるボケっぷりやしぐさの可愛さも含めて、今作で魅力がうなぎ上りになった気がします。

 希美は、昨年からその脳筋さや明るさが軽い感じがユーフォの中でも異様な人物だったと思います。それが今作、これだけ特定の人に嫉妬して、執着したというのは、ある種驚きでした。希美は内面に人間らしい負の感情を抱えていて、それにたいして真っ直ぐな子だなと思います。部長であり、優れた奏者であったというどこかアウトサイダーな側面から、北宇治を構成する大切な一員として、自分のいるべき場所を本当に見つけられたのだとしたら、今作は希美にとっての大きな試練であると同時に、より大きな才能を前に闘わなければならない強者達へのエールでもあったのだろうと思います。

 

・優子部長と夏紀

 部長として最大級の輝きを放っていた優子。随所随所でリーダーシップが素晴らしく、お前、カッコ良すぎか…って感じでしたね。

 正直、1年生編の頃はこれほど魅力的で力強い部長になるとは思っていませんでした。ただ一人への愛を全力で貫ける魅力が以前からありましたが、その対象が北宇治高校吹奏楽部の全国金賞、になると、こんなにも頼もしいのかと。

 始終部内の人間関係に気を配りつつ、どうしたら昨年を超える演奏になるか、常に適切な判断で部を引っ張っていく、凄い統制力だと思います。目的を達せられなかったとわかると、すぐ翌年に向けて最善の手を切れるところも、本当に理想のリーダー像ですね。夏紀との痴話げんか(笑)や香織大好きっぷりで身近さがついてますが、手の届かないくらい優れた人物に成長していて、その凄さにゾクッとしました。翌年に向けて久美子を動かしていたなんて、なんという策士。頑張りすぎる描写もありましたが、それがないと逆に完璧すぎるくらい。それでいてあすかのような距離を感じないのは、その優しく真っ直ぐな人柄ゆえなんでしょうね。優子まじ半端ない。

 そして、それを支え切った夏紀。奏者として目立つ活躍はなく、人間関係についても本作は久美子に譲った印象が強いですが、副部長として優子を支えられる唯一の存在としてその役目を自覚し、見事やりきっていたと思います。奏のような年下の子に普通に教えを請いたり、希美を追いかける役を久美子に委ねたりと、本当に自分の立場を正しく捉えて動ける点、賢い子だと思います。その分、弱気な本音を久美子に漏らす終盤の場面はグッときました。カリスマ性や奏者として強い立場になれないからこそ、そういう存在への憧れはきっと大きかったのだろうなと思います。それを心にとどめて役目を果たし、そのことを「ラッキー」と受け止められる、夏紀のおかげで今年の部が上手くいったのは、間違いないと思います。

 

・結果について

 今年全国に行けないという展開は予想していましたが、まさかダークホースが出てくるとは…。求との親子関係で、もうひと悶着今後ありそうですね。

 ここまで全体のレベルが上がってしまったコンクールでは多分、明確な上下なんてつけられるものではないのかもしれないですね。北宇治が上に行くか、他の強豪が上に行くか、拮抗する超ハイレベルな学校が全部いい演奏をしたなら、あとはもはや運の領域なのかなと思います。当事者にとってはこの上なく残酷なことだと思いますが。

 その分、欲しかった結果は得られなかったけど、お客さんからのもの凄い拍手を得られたというのが、とても良い描写だなと思いました。彼女たちの演奏が、音楽として素晴らしかったという証明として、この上ないものだと思います。

 

・卒業生たち

 3年好きとしては、葵が音楽を続けているというのは嬉しかったです。本当に良かった。晴香と同じサークルというのは、また面白い縁ですね。確かに、卒業してから仲良くなるってあることだし、枠から解放された二人の晴れ晴れした表情を知れて、とても幸せな気分になりました。

 あと、あすかと香織は付き合い始めたの?原作HPの北宇治だよりで香織の後悔が綴られていましたが、この二人は両想いになったようで、良かったというか、良かったんだよね?なんか混乱してますがw 香織にとってのあすかは、他の人が言う「特別」とは異なる「特別」なんだなと、凄く納得しました。それにしても一途だな香織…。

 あすかはちゃっかり次作への伏線も残していくあたり、さすがですね。もしかして実家を出たのかな。あの絵葉書が使われる未来を想うと、いまから楽しみなような怖いような。

 

・チーム黄前

 正直、部長は緑輝になると思っていたので意外な展開でした。確かに、メンタル強すぎて、逆にあれなのかな。

 久美子は今作で人間関係調整のプロとして稀有な存在に昇格した感がありますね。いままでの探偵気質からさらに踏み込んで、なにか色々な事をちゃんと受け止めて、良い方へ人を導ける、そんな凄い人になりかけている気がします。

 そして、それを支える副部長秀一。前々から優しくも強く久美子を支える存在としていい男っぷりを発揮していましたが、秀一に支えられすぎることへの久美子の不安も垣間見え、別れたことで、今後二人の関係が一層複雑に深まっていく気がします。あと、秀一といるときの久美子が作中最高に可愛いと思った(笑)

 麗奈がドラムメジャー、そして演奏クオリティの担当というのは、誰もが納得の配置ですね。今回ののぞみへの励ましといい、ゴーマイウェイだった麗奈が、北宇治全体のクオリティのために動くようになったというのは、とても大きな成長だと思います。厳しい側面を担当することがこんなに似合う人もなかなかいないし、つくづく説得力のある存在ですね。3年時の麗奈、カッコいいんだろうなぁ。今からめっちゃ楽しみです。

 

4、その他

 月永家やあすかのハガキ、なにより全国金賞を逃したことでもう明らかですが、久美子3年生編ありますよね。正直北宇治のみんなが輝きすぎてて見ていて大分眩しいです(笑)。彼女たちの頑張りに恥じないよう、いち読者として日々頑張りながら新刊発売を待とうと思います。