arukikkuの日記

映画、ゲーム、小説、漫画、アニメ、などの感想。独断と偏見で好き勝手に書いてます。

エルデンリング感想(クリア後ネタバレあり)

私は大学時代にFFとラストオブアスにドハマりしてから自称ゲーマーとして過ごしてきたのだが、社会人になってからは、割と固い仕事をしていることもあって、面白そうなゲームが発売されても正直手が出にくくなった。職場の飲み会でゲームが趣味だと言っても話が通じる人がいない(そしてちょっとバカにされる)し、自分でも「いい年してゲームなんて」と思ってしまう癖がつくようになった。

しかし、そんな表面的な社会性の殻を破り、140時間のめり込ませてくれるゲームに久々に出会うことができた。ELDEN RING(エルデンリング)である。

昨日無事エンディングを迎えたので、稚拙ながら本作の印象的だった要素をあげる形で感想を書きたい。

一応ストーリーに必須でないものも含め主なステージは全て攻略し、エンディングも複数みた上の感想なので、クリアまでのネタバレが全開なのはご注意ください。ただ、宮崎さんの作品は1から10まで説明するタイプの作品ではないこともあり、本作の全体が理解できているわけでは全くない。そのため、考察と妄想を含め書くが、愛はあるのでご容赦いただきたい。

 

<圧倒的な世界観とその提示の巧みさ>

(おそらく本作のシリーズの系譜の一つである)ブラッドボーンをプレイした時も感じたことだが、宮崎ディレクター率いるフロムソフトウェアの作品は世界観の完成度が高すぎると思う。この世界ではどういう種族、道具、宗教、病があって、過去にどんな出来事があり、それが原因で誰が何をしているか、というのが驚異的な密度で形作られている。しかもそれがとても魅力的なものであるということが、様々な種族の行きかうリムグレイブの広大な大地とそびえたつ黄金樹によって、最序盤から説得力を持って提示される。

にもかかわらず、終始それらを全て把握できている誰かが全体像を説明してくれるわけではなく、プレイヤーはただそこらにある建築物やアイテムや書物やボスの語りから、その世界観のピースを少しずつ自分で埋めていくしかない。行く手を阻むボスはみな強敵だらけなので、さながら凄く旨い餌を散りばめられたサバイバル場に迷い込んでしまったかのような気持ちになる。でもリエーニエの湖や、魔術塔や、ローデイルの城を囲む木々や、ケイリッドの血を煮詰めたような赤い沼や、何より高くそびえたつ黄金樹のビジュアルが美しすぎて、この世界の謎を知りたくて仕方なくなってしまう。その吸引力を生み出すデザインワークの巧みさは他に類を見たことがない。

個人的に、特に印象的だったのはシーフラ河で、建物の中に井戸があり、その井戸が驚くほど深くまで続いていて、底まで降りて少し進んで上を見上げると一面の星空が広がっている、という光景には思わず息をのんで魅入ってしまった。まさかあんな地下深くに降りた先にこんな広大な世界が広がっているとは。というか地上だけでめちゃくちゃフィールド広いのに、地下にもこんな広大な世界観広がってんの!?と度肝を抜かれた。しかもそこにあるのが滅びかけの王朝や宮殿だったりするので、なんで地下にこんな発展した建造物があるんだ?とか、この宮殿だれを祀ってるの?とか気になってどんどん奥に進んでしまう。

本作にはそんな瞬間が数えきれないくらい沢山ある。オープンワールド作品全体で言えば、大分前から沢山のAAAクラスのタイトルが作られているし、グラフィックが現実より綺麗な作品ばかりになってきている。それはそれで凄いんだけど、あまりに沢山出すぎて正直ビジュアル面でちょっと食傷気味になっているプレイヤーが多いと思う。けど、本作についてはプレイ中ビジュアルに見飽きるということが一瞬もなかった。それどころか、こんな景色見たことない、というようなロケーションが凄く多く、最初から最後までとにかく魅力的な世界を歩き回って自分の目で見たな、という感覚を与えてくれるのだ。この点が、本作の圧倒的特別感の一つだったと思う。

 

<徐々に掴めてくる人間関係のエモさ>

そして、そんな荘厳で説明の少ない世界だからこそ、たまに理解できるキャラクターの関係性や熱意に思わずグッと胸を掴まれてしまう。これが個人的に感じた本作の特別感の2点目。あんまり「エモい」というと軽くとられてしまうかもしれないけど、他の端的な表現が思いつかなかった。

主人公は喋らないしキャラメイクも自由なので、RPG要素としてキャラクター性を楽しめる部分は、主に作中に登場するNPCキャラクター達との会話や、彼らについて知ることができるアイテムの説明文によるところとなる。しかし、前述のとおりそもそも世界観の情報がまちまちにしか入手できない中で、みんな黄金律がどうとか、二本指がどうとか、一般的には使用されないこの世界ならではの単語を連発するので、キャラクターのイベントを進めても中身を伴って理解できる部分は割と少なかったりする。しかし、だからこそたまに理解できるキャラクター同士の人間関係や熱意みたいなものが出てくると、それが何倍もの魅力をもってエモく感じられてしまうのだ。

その代表が、ラニイベントではないかと思う(以下ガッツリネタバレ)。

ラニはフロムゲーにしては(?)珍しい誰が見てもかなり可愛い比較的普通の女の子寄りの造形だが、イベントの中で、実は最も神に近いデミゴットであることが明かされる。さらに、彼女が神になる運命を期待されながらそれを自らの意思で拒み、それがきっかけの一つとなって狭間の地が壊れかけているらいしということ、そのラニの選択を、本来神に仕えなければいけない従者であるブライブが、ラニ個人への忠心で支え続けていることがわかり、ラニはイベントの最後に、ブライブと、同じく彼女を支えたイジーへの想いを言い残して消える。この流れの全てがエモい。エモすぎる。殺伐とした世界観や意味のわかりにくい単語の渦に飲まれて理解を放棄しかけていた中でこういう直球のエモい球を投げられると、もう刺さりまくってラニとブライブとイジーが大好きになってしまうのも仕方ない。(セルブスは…うん…)

また、ネットの感想だとあまり見ない気がするけど、個人的にはラニイベントと同じかそれ以上に刺さったのが、ミケラとマレニアの関係。マレニアは本作のデビュートレーラーからずっと象徴的に登場する女性剣士で、見た目の格好良さから発売前から大人気だったが、いざ本作を進めると、ケイリッドの腐敗やラダーンの哀しい現状や、マレニアの分け身(?)ミリセント姉妹の過酷な運命などは、全て彼女がラダーンとの対戦で腐敗を爆発させたことが原因だったのでは、ということが分かる。本作は腐敗による影響を各所で描いでいるので、この点だけ見るとマレニアは諸悪の根源になってしまうのだが、ミリセントのイベントを介すると、マレニアがマリカ=ラダコンの子として神人であり次の神になれるはずの存在でありながら、生まれながらに腐敗を身に宿しそれに苦しんできたこと、それでもなんとか腐敗を内に沈めて抗ってきたこと、永遠に幼い体を強いられた兄ミケラを守るべくミケラの刃となったこと、ラダーン戦でその腐敗を解き放たなければ負ける状況になり、(おそらくミケラを守り続けるため)腐敗を解き放ってでもラダーンと相打ったこと、などが概ねわかってくる。

一方のミケラも、神人として黄金律を継ぐことを期待されながら、それが妹のマレニアの腐敗を癒せないと知って別の新しい律を作ろうとしたり、マレニアを大事に想っていたらしいことがほのめかされている。ミケラは人を魅了できる力があったようなので、ミケラを愛する人が多いのは納得だけど、ミケラから誰かへの想いへの描写が少ないので、この点が割とはっきり祈祷テキストで書かれているのは本意なのだろうなと。

とすると、このきょうだいは神から生まれて神になるはずだったが二人とも体に大きな欠陥を抱えていて結局神になる道がなく、他方で出自から色んな信仰やら寵愛の対象にされ、本人たちはお互いを想いながら生きてきたが、離れ離れになり二人ともかなり悲惨な経緯を辿る、ということになる。マレニア撃破後のmy dearestというセリフや、多大な犠牲を生んでもただ一人を待つというセリフ、ミケラが最強であるマレニアすらも超える恐ろしい力を持ちながらなぜモーグの妄想に従っていたのかなどを考えると、この二人の関係性も非常にエモいような気がしている。ミケラは特に作中最重要人物っぽいのに全体像なり本人のセリフが実際に出てこないので、DLCなどで補完やその先の話が出る可能性はそれなりにあるのではと思う。

ちまたでは影が薄いといわれるメリナについては、ミケラ説があるようで、確かにメリナの服がマレニアの部屋のそばで見つかったりミケラの魂自体はどこかにあるはず(かつどちらも右手薬指に指輪をしている描写がある)ので、それがメリナだという可能性は結構あると思う。だとするとメリナは影が薄いどころか、プレイヤーが能動的に読み解かないといけない最重要人物ということになるか。ミケラは作中もっともおそろしい存在とされているので、彼女を狂い火エンドで静かに激昂させてしまっている事実は非常にやばいということもわかってくる。復讐のデミゴットとなったメリナが主人公を見つけ出して戦いになる展開とか、ありえてもおかしくない。

他にも魅力的なキャラクターが多数登場するし、エルデンリングはぱっと見の印象より人間味あふれる作品だなという点が、プレイしてみてのいい意味で予想外な部分だった。これは完全に邪推だけど、他の作品ではあまりみないようなデザイン性や実は感情が重かったり狂気に歪んでいるキャラクターも多く、なんというか、フロムゲーは各作品で新しい性癖みたいなものを開拓するノルマでもあるのかな、と思ったりもした。

 

<攻略における手数の多さ>

最後に言い尽くされたことかもしれないけど、やはりアクションゲームとしての面白さに振れないわけにはいかない。本作の難易度はかなり高いと思う(レベルをかなり上げても被ダメージがそれなりに高いのでミスが続けば必ず死ぬし、スタミナとFPでゴリ押しの制約がある)。しかし、解決のための手数がとにかく多い。魔法、祈祷、遺灰、戦技の種類の多さがすさまじく、付け替えも比較的簡単でコストがそんなに高くない。明らかに色んな戦法を試さないと勝てないような敵も多く、これは過去作と比べて近接だけでなく色んな方法を試してほしいというメッセージなのか、アクションが苦手な人にも最後まで遊んでほしいという趣旨なのかわからないが、いずれにせよ遊び方の幅が格段に広がっていて面白い。しかも魔法や祈祷、遺灰、戦技の多くに世界観に繋がるエピソードがあり、特に祈祷と遺灰は重要キャラと繋がっていたりもするので、実際に戦闘で使わなくても収集したくなるように構成されていて巧みだなと思った。

アクションのために武器や術があるというよりも、この世界観だとそういうものがこういう経緯で生じる、という部分まで作られていることが分かる分、それを使っているときに自分もこの世界の一員だという感覚が深まるのだろう。

また、ボス戦も面白いものが多かった。個人的に特にゴッドフレイ(霊体的なほう)とマレニアが楽しかった。マレニアは人生で一番苦戦したかもしれないというくらい沢山戦って、辛かったが、先にミリセントイベントをやっていたこともありマレニアの人物像がある程度わかった上で挑むと、ついに、という熱さで辛さよりも興奮やワクワク感が勝った。あと火の巨人。苦戦して、勝った直後震えがとまらなくなって驚いた。

 

ロードオブザリングファンにとってのエルデンリング>

最後に、世代的にどうしても書きたいので、映画ロードオブザリングシリーズのファンとしてエルデンリングが如何に待ち望んだゲームだったか、ということを書きたい。

2000年付近に日本でも大ヒットしてアカデミーも総なめにしたロードオブザリングという映画、今の10代20代がどのくらいみてるかわからないけど、自分はドンピシャ世代で中高生くらいのころドハマりしていた。おそらく、合戦を伴うファンタジー作品が実写として大スケールで映像化されたのはロードオブザリングが最初だったと思うし、映画ロードオブザリングのビジュアルがなければ、その後のファンタジー大作のビジュアルは全然違ってたと思う。当時この作品を見ながら私は、この世界観で自分も馬とか乗ってデカい敵と闘えたらな~と思っていた。エルデンリングが、その夢をかなえてくれた。

エルデンリングでリムグレイブの森を走り抜けているとき、巨人の足元を馬に乗りながらズバズバしているとき、魔法でドラゴンと戦っているとき、火の窯の縁に立った時、「あれ?これってあれじゃん、あの頃夢見てたあの感覚じゃん!」と何度も思った。

他のファンタジーゲームでは感じたことがない感覚だった。他のゲームにはない、この世界観の密度とビジュアルだからこそ、そう思ったんだと思う。何よりうれしかったのは、夢見てた時のイメージよりもさらに凄いビジュアルや自由度の中でその感覚を味わえたこと。きっと、同じように本作で夢がかなった人は結構いたんじゃないかな、と思う。

 

長くなったけど、以上がクリア後の感想です。本当に面白いゲーム、いやゲームを超えた作品として最高の時間を過ごさせてくれた。最高すぎて2月以降若干生活に支障もでるくらいだったけど、そこまで自分の中でプライオリティの高い作品と出会えたことがとにかく嬉しいし、欲を言えばこれからもこの世界観をさらにいろんな形で楽しみたい。スタッフ、キャストの皆さん、本作を作ってくれて本当にありがとう。DLC、いつまでも待ってます。