arukikkuの日記

映画、ゲーム、小説、漫画、アニメ、などの感想。独断と偏見で好き勝手に書いてます。

Life Is Strange(ライフイズストレンジ)感想

1、ネタバレなし感想

 評判が良かったので、ps3でプレイしました。5つのチャプターで構成されていて、さながら5話の海外ドラマをプレイしているかのよう。ゲームである分ドラマより没入感が高く、主人公マックスにどんどん感情が入り込んで、幾つかのシーンがすごく記憶に残るものになった。アート(さすがフランスの会社…!)、音楽、ストーリー、キャラクター造形、どれもよく練り込まれていて、深みと面白さの詰まった良いゲームだったと思う。

 クリアまでのプレイ時間について、自分は20時間くらいだったけど、なにせこのゲームは随所随所で時間を巻き戻して再度トライすることができるので、おそらく人によっては3,40時間かかる場合もあるのでは。逆にサクッと進めちゃう人は10時間ちょいで終わりそう。調べるアイテムとかの要素が多いので、ボリュームは決して少なくないという印象だった。キャラクターを好きになれるかでゲーム自体を楽しめるかが決まってくるタイプの作品なので、なるべくじっくり色々な小物とか選択肢を試しながら進めた方が良いと思う。

 タイムリープものではあるけど、ディレクターコメンタリーで言っていた通り、SF要素はただのツールで、このゲームの一番の魅力はキャラクターたちの心模様や、社会問題をガンガンに取り入れたストーリー。いじめや家庭の問題、失業、病気、ドラッグなどをキャラクターたち自身の問題として自然に取り入れていて、プレイヤー(マックス)はそれに向き合わなくてはいけないし、決断しないといけない。けどそれがただ堅苦しかったり憂鬱というわけでなく、この子の状況をなんとかしたい、という友人としての気持ちで向き合えるというのが、このゲームの凄く優れた点だと思う。それが適っている要因はおそらく、主人公マックスの性格がめちゃくちゃいい(優しさとユーモアと独特のオタクっぽさがある)のと、脇役たちのバックグラウンドがよく描かれている点にあると思う。一見ヒドイ奴も、実はそいつの部屋をよく見ると意外な面や優れた面を知れたりする。そういう散策をじっくりしながらストーリーを進めれば、グッとくる瞬間が沢山あると思う。

 ちなみに最初英語の勉強目的で字幕音声全部英語にしたんだけど、結構スラングも多いし言い回しが自分の英語レベルでは大分難しくて、途中で諦めて日本語字幕にした。そしたら案外日本語字幕のニュアンスが素晴らしくて、ローカライズスタッフさまさまなゲームでもありました。

 

 

 

2、ネタバレありまくり語り

 未プレイの方は、特にこのゲームはネタバレとか攻略見ない方が良い(起こることを実際経験した方が良い)と思うので、読まないことをおすすめします。

 

・マックスが良すぎる

 マックスの、アイテムとかポスターに対する反応がいちいちちょっと皮肉っぽかったりしてめっちゃ面白かった。こんな自然な感性の主人公よく生み出せたなぁと、途中からそこに感動しまくっていました。終盤は黒いシャツも相まって格好良さと本物のヒーローっぽさも感じられて、凄く魅力的な主人公だったと思う。真相がわかった後また振り出しに戻った場面ではマックスの成長(積極的になったというか、選択することを迷わなくなった感じ)が如実に表れていてなんだか感慨深かった。あとアップになるたび思ってたけど、マックスかなり可愛いよね。

 

・ジェファソン

 最近見たタイムリープものの作品とちょっと展開が被ってて、既視感が(笑)。芸術肌でみんなに尊敬される先生が実はサイコパスで~という展開はちょっとありがちな気もして、この辺の展開は好みが分かれそう。写真家としての成功とかでなく、この人はこの人なりに追い求める何かがあったんだろうけど、殺しちゃあかんやろ…。

 

・個人的に良かったシーン

  全体的に場面の色調(夕日の温かい感じや各キャラの部屋の温度差、トイレや暗室の不気味さ、線路の静かな感じ、夜のプールの鮮やかさ、廃棄物置き場のカラフルだけど廃れている感じとか)が凄く良かったし、終盤のループから抜け出せないような焦燥感をあおる演出、スノウドームの中からみる自分の選択の罪という構図、クロエと二人で海を眺めている時のノスタルジー、どれも最高だった。語彙力がなくてホント悲しいけど、エモいシーンが沢山あったな…。沢山あったけど、特に好きな場面を。

 ケイトへのお見舞いシーン。ケイトとマックスが抱き合うとこで、本当にケイト助かって良かったなぁ、とぐっと来た。ケイトが敬虔なクリスチャンというのは設定にエッジがきいてて凄く良いと思う。ケイトの部屋着のダサさが最高だと思った。

 別ルートのクロエと、クロエの部屋で二人で映画を見る一連のシーン。クロエを殺すかどうかの選択肢でとにかく悩みまくった。まさかこんな選択肢がくるとは思わないでしょ…。クロエだけじゃなく、ジョイスやお父さんにとってどうすべきかとか、現実のことみたいに色々考えた。こっちのクロエは汚い言葉遣いもしないし凄く立派で優秀というのも、なんともやりきれない。気管支が弱っていることなどもさりげなく表現されていたり、セリフやクロエの部屋の描写などが凄く自然で、正直序盤クロエ好きじゃなかったんだけど、この一連のシーンから人柄を知ったように思えて、凄く大事な存在に感じるようになった。

 パーティー会場前でのウォーレンの酔っぱらいシーン。素のウォーレンって感じのニュアンスがでていて、オタクで良い奴というだけじゃない、ウォーレンも漠然とした未来への不安を抱えてるんだなあというのが見えて、凄くウォーレンが好きになったシーンだった。というか、ウォーレンめっちゃ優秀で優しくていざというとき格好良くて、あんなんみんな惚れるわ。

 ネイサンの留守電。泣いた。今作唯一泣いたのがこのシーンだった。ネイサンの父親の冷たさや精神の病で苦しんでいたこと、ジェファソンを親のように慕っていたことがそれとなく描かれていたので、もうこの留守電でめちゃめちゃネイサンが可哀想になってしまって、車運転しながらどうにかしてネイサン救済ルートがないかと思ったがそんなものはなかった(いや、最後の選択肢で助けられたけど)。

 

・最後の選択肢について

 私はウォーレンとかケイトとかビクトリアとかネイサンとかジョイスとか、この街の人が凄い好きになってしまったというのが大きくて、結局クロエを犠牲にした。タイムリープものとしてはこういう選択肢で終わるのはちょっとありがちかな、とも思ったんだけど、その前のクロエとの思い出をひとつひとつ辿っていくステージがめっちゃ良い出来だったのと、ラストのムービーをみていて、この街の平和がクロエっていう一人の大切な友人の犠牲で成り立っているという実感がわいてきて、なんというか凄く尊いもののような感じがした。クロエとのあるはずのなかった二人の時間がマックスの中だけにある、という記憶とか時間のありように感動したというか。主題歌はクロエ生存ルートで流れていたから、話としては親友のために街を犠牲にする方が美しいのかもしれないけど、クロエがいないからこそマックスはその犠牲を1人背負っていくわけで、そういう締めくくりの方がマックスの物語としては意味深いんじゃないかと思った。

 本作は正直「え、ここの部分だけこう変えてもっかりやり直せばよくね?」とか色々突っ込もうと思えば突っ込めてしまうし、そもそも能力の詳細な説明がないので作り手も理論的な部分は重視していないのではないかと思う。でも、それをふまえて、マックスの一番マズかった選択は何だったかと考えれば、それは多分引っ越した後5年間クロエと連絡をとらなかったという選択なんだと思う。その間親友であり続けたならクロエはそもそもトイレで撃ち殺されるような危ない話に首を突っ込まなかっただろうし、この先も二人いっしょに生きていけたんだと思う。でももうその選択肢をやり直すことはできず、状況が変わった後にどれだけやり直しを頑張ってみてもすべてが上手くいくことはない。それだけその選択が、当時のマックスにとってはただなんとなく気まづくなって消極的にそうしていただけだとしても、重い選択だったということをこのゲームは伝えたかったのかな、となんとなく思った。

 

3、その他

 ディレクターズコメンタリーも凄く良かった。プレイ後まだ見てない人がいたらぜひ。無料でダウンロードできるので。