arukikkuの日記

映画、ゲーム、小説、漫画、アニメ、などの感想。独断と偏見で好き勝手に書いてます。

The Last of Us感想

1、作品について

  PlayStation 3専用タイトル。開発はノーティードッグ(Naughty Dog, Inc、アメリカ)。サバイバルホラー アクションアドベンチャーゲーム。日本でのリリースは2013年。略称は『ラスアス』と『TLoU』。2014年8月21日にPS4専用のHDリマスター版が発売された。(wikiより)

 ラスアスは有名大ヒットタイトルですね。アカデミー賞ゲーム部門ベストゲーム賞をはじめ多くの賞をとっていて、ps3のベストソフトに挙げる人も多いと思います。私もあまりにネットで評判が良かったんで洋ゲーもホラーゲーも興味なかったけど購入し、数日でのめりこむ様にプレイしてクリアしました(トロコンはしてません)。クリアしたのがだいぶ前なので、不正確な記述があったら申し訳ありません。

 

2、ネタバレなし感想

  冒頭から引き込まれ、まるで一本の映画の中にいるかのように状況にどんどん飲まれていきました。感染や敵の恐怖に焦るのは勿論のこと、次々に出会う登場人物との間で展開される極限状態でのリアルな感情や人間関係に打ちのめされたり憔悴したり。季節が変わっていく中で、主人公ジョエルとエリーの関係性も少しずつ変化していき、とにかく続きが気になって止めどころがわからない状態でした。戦闘についても、シンプルでありながら戦略性を求められる作りで楽しかったです。

  没入感を生み出している最大の要因は優れたストーリー性と演出だと思いますが、グラフィックが頭おかしいくらい美しいのも大きな要因だったと思います。ノーティドッグさん自体、アンチャなど映像クオリティに力を入れた作品で有名ですが、ラスアスのグラはもはや現実より美しいです。本作の舞台は、感染症で人類のほとんどが感染し人類分明が衰退した世界であり、ジョエルとエリーが旅する場所もほとんどが廃墟です。壊れたアメリカの都市部のビルとかを自然が浸食している様が、皮肉にも非常に美しく、つい魅入ってしまいました。

  また、本作の音楽は、映画「BABEL」でアカデミー賞を受賞したグスターボ・サンタオラヤさん。正直ゲームミュージックっぽくは全くない。というか一般的なBGMっぽくもなく、おそらく単体で聞いても「…?」って感じだったと思う。けど、ラスアスの世界の絶望と美しさを見事に表現していると思うし、唯一無二かつBest for ラスアス なことは間違いない。また、クリッカーの音など、日常生活ではないような異様な音が緊張感をガンガンに高めてきて、プレイ中はゲームしてない時も空耳が聞こえてくるくらい印象的でした。フィールドBGMがなく、基本足音や自然音で画面音楽が構成されているのも、ラスアスの世界への没入感と緊張感を高めていて魅力的でした。

 本当に噂にたがわぬ面白さだったし、かなり後を引く作品だったなと感じています。現にクリアしてもう2年くらいたってるんですが(笑)、今でもかなり覚えているシーンがあるし、たまにラスアスに思いを馳せます。人間の奥側を、非常にエンタテイメント性を持たせながら描いていて、とても完成された作品だったなと。やって良かったです。 

 

 

 

3、ネタバレ全開語り

 もう語りつくされているのかもしれませんが、プレイしていて特に印象的だったことを2点ほど語らせてほしい。ここからネタバレ全開です。

 

・医者と看護師

 この作品で一番衝撃的だったシーンは、終盤エリーを連れ帰るために手術台にたどり着き、医師と対峙した場面でした。それまで散々クリッカーやランナーを撃ち殺しまくっていたんだけど、正直クリッカーはもう人とは呼べないし、ランナーもこっちを殺しに来るし酷い奴らだから仕方ないという感じで(そこまで考えてなかったけど)普通に撃ってました。でも、医師のとこへきたときに、医師自体は確かにこっちに攻撃してくるんですが、やってること自体は他の人のためだし悪い人とはいえないし、殺していいのかという気持ちが一瞬よぎりました。さらには後ろの看護師たちはこっちを攻撃してこないし、助けてとか人殺しとか言ってくる。どうみても普通に考えたら殺しちゃだめだと思い、何とか殺さずに先に進めないかとウロウロしまくってから、ようやく我に返りました。そんなふうにジョエルとプレイヤーである自分を同化してしまうほど没入感が凄かったということだし、そこまで主人公との一体感を感じるようなゲーム体験をしたことがなかったため、私にとっては本当に衝撃的な経験でした。と同時に、これこそ映画よりゲームが優れている点なんだと実感しました。プレイヤー自身が主体的に世界に入りプレイしていくからこそできる体験という意味で、ゲームって凄く魅力的なコンテンツだと思うし、それをまさに発揮しているシーンでした。

 ・ラストの展開について

 個人的には、このあと二人がどうなるかよりも、ラストの会話が興味深かったです。エリーの、ただ終わるのを待っているという言葉に対し、ジョエルが乗り越えなければならないと諭す会話。ジョエルの言うことは、もっともだと思います。そうじゃなきゃあまりにも絶望的だし、何とかして生き延びていかなきゃいけない。けどエリーは、ジョエルと違って人間が繁栄していた時代を知らず、物心ついてからずっとこの絶望的な世界で生きてきて、多くのものを失い続けてきた。友人もなくしてどんどん孤独になっていき、状況は抜本的に何も改善していかない。2人は状況を共有してきてお互いへの信頼もあるけれど、あまりにも生きてきた時代が違ったために、そもそも生きるという意味への感覚が異なっている。そしてジョエルはそのことをわからないどころか、今やエリーを対等な仲間としてでなく娘のような守るべき存在として見ている。そのズレが解消されないということがはっきりしたシーンだからこそ、このタイトルにおけるラストシーンなのだと思います。エリーにとっては、この会話がジョエルに与えた最後の機会だったとも言えるかもしれない。私自身がジョエルよりエリーの年齢に近いので、特に後半冬のあたりからすんなり感情移入でき、最後の会話ではジョエルの返しに思わず「いやそういうことを話したいんじゃないんだよ」と言ってしまいました。でもエリーは何も反論せず、ただOKという。2人の関係性のラストとして、個人的にはとても納得できたシーンでした。

 エリーの年齢を考えると、彼女の自立っぷりは凄まじいですよね。年相応な面を魅せる場面も多々ありますが、特に後半はジョエルを看病したり、狩りをしたり、多くの場面でジョエルを助けている。そしてなにより、ジョエルと対等であろうとしているし、対等な存在として描かれている。脚本がエリーを子供ではなく一人の優れた人間として捉えている点が、この作品の一番好きなところでした。ゲームというエキサイティングな楽しさを強く求められるジャンルで、表面的な楽しさでなく、個々の人間性を丁寧に巧みに描き切った本作は本当に凄いし特別だなぁと思います。

 

4、その他

 この作品のメイキングがyoutubeにのっていて見たんですが、めちゃくちゃ面白かった。どれだけ各パートの人たちがプロフェッショナルな仕事をしているか、全力で困難に挑んでいるかという様が伝わってきました。プレイしたら、絶対みた方が良いです。特にアートワークについての、クリッカーの「怖いけど美しい」ものとして菌を花のように咲かせるイメージにしたという話が印象的でした。あと、自分の容姿とは違う人物を演じられるという意味で、モーションアクターの仕事って役者さんにとって凄く面白いんじゃないかと思いました。日本のゲームでも最近FFとかメイキングだしてるし、クリエイター側のお仕事をもっと見てみたいなぁ。

 吹き替えについても、山寺さんは色々な役をやってらっしゃいますが、個人的にジョエルが一番好きになりました。潘さんも、声音がエリーにこの上なくハマってました。

 あと、続編が発表されましたね。正直プレイ直後は、あまりにも完璧な終わり方だと思って絶対続編いらんやろと思ってました。でも、ラスアスのIPとしての魅力を考えると、また作ってくれるなら絶対やりたい。PVを見る限り、誰も幸せにならなそうなかんじですが…。あの絶望的な世界だからこそ、個人的にはエリーにはユーモアを失わずに生きていってほしいです。